インサイト
企業の「生産性劇場」という現実
先週、誰かがプレゼン資料を作るのを8時間ずっと見ていた。
リサーチじゃない。戦略じゃない。思考じゃない。資料を、作っている。
フォントの選択。ボックスの位置合わせ。アクセントカラーは「オーシャン・ブルー」がいいか「ミッドナイト・ティール」がいいかでの言い争い。
プレゼンは社内ミーティング向けのものだった。12人が参加し、まともに聞いていたのは3人。誰も何も決めなかった。
最高峰の「生産性劇場」
これこそ、まさに生産性劇場の極みだ。
GfKの調査によると、ビジネスパーソンは平均して月20時間をPowerPointに費やしており、そのうち40%が純粋な書式設定なのだという。インサイトでも、戦略でもなく、ただの書式設定だ。
つまり、誰かが「調査結果を発表しました」と言えるためだけに存在するスライドと格闘することに、年間100時間以上を費やしているわけだ。
ここにあるのは、誰もが認めたくない不都合な真実だ:
誰もが認めたくない不都合な真実
ほとんどのレポートは、仕事をしたという実績を示すために存在する。
ほとんどのスライドは、それが発表されるミーティングを正当化するために存在する。
ほとんどのテンプレートは、誰もゼロから考えなくて済むようにするために存在する。
私たちは、成果そのものではなく、「成果を出しているというパフォーマンス」を中心にした企業エコシステムを築き上げてしまったのだ。
「成果のパフォーマンス」
そして、AIが登場した。
突然、スライドは10分で完成し、レポートは自動で書かれ、テンプレートは自動入力されるようになった。
では、そのパフォーマンスを極めることにキャリアの大半を費やしてきた人たちはどうだろう?彼らは怯えている。AIに仕事を奪われたからではない――その仕事が最初から本物の仕事ではなかったからだ。
本当の問いは「どうすればもっと良いスライドが作れるか?」ではない。
「そもそも、スライドなんて最初から必要だったのか?」なのだ。